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高山俊吉「裁判員制度はいらない」(講談社 2006年)


2009年4月から施行される刑事裁判における「裁判員制度」。あなたもいつ裁判員に選ばれるか分かりません。晴れて裁判員に選ばれたら、被告人が本当にその罪を犯したのかどうか、有罪だとすれば、その被告人を死刑にするか、無期懲役にするか、懲役何年にするか、執行猶予をつけるかは、あなた自身が決めなければなりません。「そんなのいやだ」、「自信がない」といっても、許してくれません。しかも、評議の内容については、一生、守秘義務が課せられ、うっかり口をすべらせようものなら処罰が待っています。国民の7割が裁判員になりたくないと回答するのも当然。これってとんでもない制度ではないでしょうか。

五十嵐二葉「説示なしでは裁判員制度は成功しない」(現代人文社 2007年)


 裁判員制度は、素人が裁判官と一緒になって、事実認定だけでなく量刑まで決めるという世界に類例のない制度。その目的はあくまで「司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上」(裁判員法1条)。要するに「お上を理解・信頼せよ」というだけであって、法律には、国民が権力をチェックするためとも、冤罪を防ぐためとも書いてないのです。そして、被告人には裁判員裁判を拒否する権利はなく、裁判員に負担をかけないためには「迅速化」が必要ということで、「公判前整理手続」により弁護権も制限されます。
  そこで筆者は、裁判員が裁判官の誤りや不適切な裁判を是正するためには、少なくともアメリカの陪審裁判で行われているような「説示」(裁判官が素人の陪審員に対して事実認定の方法などについての詳細な説明をすること)が不可欠であると訴えます。 確かにこの程度のことがなければ、2009年以降の刑事裁判はとんでもないことになるでしょう。

池澤夏樹:文 本橋成一:写真「イラクの小さな橋を渡って」(光文社文庫、2006年)

 イラク戦争開戦直前の2002年10月〜11月、遺跡取材のためイラクを訪れた著者は「もしも戦争になったとき、どういう人々の上に爆弾が降るのか」に目を向けます。イラクの市井の人々は、実に明るくて親切。旅行者に人なつこく近寄り、一緒に歌う子供たち。 「戦争とは、この子供たちの歌声を空襲警報のサイレンが押し殺すこと」、それを正当化する理屈があるのか。イラクだけでなく地球上のあらゆる戦争と紛争について問いかける本です。

謝花直美「証言 沖縄「集団自決」−慶良間諸島で何が起きたか」( 岩波新書、2008年)

 教科書検定での「軍強制」削除でクローズアップされた沖縄戦「集団自決」。検定での 「修正」理由は、大江健三郎著の岩波新書「沖縄ノート」が日本軍責任者の名誉を毀損したとして提訴された訴訟の存在でした。
 教科書検定に沖縄戦を体験した人々は大きな衝撃を受け、その怒りは2007年9月29日の11万人の県民大会に結集しました。この本は、2005年から沖縄タイムスが始めた「挑まれる沖縄戦」キャンペーンの記事から、慶良間諸島の戦争体験者の「集団自決」をめぐる聞き書きを再構成したもの。自らの家族を手にかけた「集団自決」の記憶は、生き残った人の中でも封印されてきました。この本で体験を語った人の半数が、初めて戦争体験を話しています。あえて辛い記憶に向き合った源にあるのは「歴史を歪曲してはならない」という思いです。
 「集団自決」がいったい何であったのか、事実を知るために一読をおすすめします。


脇田滋「労働法を考える この国で人間を取り戻すために」(新日本出版社、2007年)

 民主法律協会の会員であり、ホームページ「派遣労働者の悩み110番」を主催し、全国の労働者を励ましてきた、労働法学者の最新刊。
 労働組合の抵抗なしに、新自由主義の圧力がまともに労働者の雇用や生活を圧迫している点では、日本の労働者の置かれている実態はアメリカと並んで世界最悪。それなのに、「労働ビッグバン」を推進しようとしている市場原理主義者は、あたかも自分たちが非正規労働者の味方であるかのような顔をして、正規労働者の「既得権」を攻撃するのです。
 これに対抗するには、労働者自身が自らの権利を自覚し、学習し、正規・非正規の別なく団結して、たたかうしかありません。
 これから働こうとしている学生や、すでに働いている若い人に読んでほしい1冊です。


堤 未果「ルポ 貧困大国アメリカ」(岩波新書、2008年)

 6000万人の国民が1日7ドル以下の収入で暮らしているとされるアメリカ。貧困者は安くて手軽なジャンクフードしか食べられないため肥満だらけとなり、災害が起きれば溺れ死ぬか難民になるしかない。 一度病気をすれば世界一高い医療費の負担で自己破産。若者が大学進学すればローン地獄。これを返済しようと思ったら軍に入るか民間戦争請負会社の社員としてイラクの前線に行くしかない。そこで待っているのはPTSDや劣化ウラン弾による白血病…新自由主義政策の行き着く先は悪夢のような社会です。
  「『役所がひどいから民営化』という安易な考え方が危険であることを、取材した多くのアメリカ人から警告された。」という著者の言葉をかみしめたいと思います。


黒田充「2011年、テレビが消える −光ファイバ、ケーブルテレビ化の真相−」(自治体研究社、2006年)

 2011年7月24日と決められたアナログ放送打ち切り。そのため、テレビの買い換え等が求められ、負担に耐えられない視聴者はテレビが見られなくなります。それでは困るとばかりに過疎地の自治体が主導する新たな公共事業・光ファイバ、ケーブルテレビ化。   これらは竹中平蔵氏らが率いた「e-Japan戦略」がもたらしたものでした。そこで展開される放送業界と通信業界の覇権争い。他方、番組制作現場でまかり通るのは広告主の介入と低賃金の不安定労働。国民の知る権利もそっちのけ。高いお金を支払って見せられるのが「高品質・高音質の俗悪番組」というのは、悪夢以外の何物でもありません。

パオロ・マッツァリーノ「反社会学講座」(ちくま文庫、2007年)
  「少年犯罪は本当に増えているのか?」。いいえ、統計上、戦後もっとも少年犯罪が多発したのは昭和30年代。あの「三丁目の夕日」の時代です。戦後最もキレやすかった少年は昭和18年生まれということになるわけです。このほか「パラサイトシングルは非難されるべきなのか?」、「行政の作る施設に『ふれあい』という名前が多いのはなぜ?」「少子化は本当に問題なのか?」等々、世にあふれる、まことしやかな言説を、ナゾのイタリア人がお笑いでなで斬り。各章ごとの、すこぶる強引な「まとめ」も一興です。

浜井浩一・芹沢一也「犯罪不安社会 誰もが「不審者」?」(光文社新書、2006年)
  「子どもを守る」。そのことに異を唱える人はありません。それを旗印に地域をパトロールすることが快感となる社会。裁判の重罰化も進み、飲酒運転事故では殺人罪より重い刑すら言い渡されています。しかし、テレビのコメンテイターの事実に基づかない無責任な発言とは裏腹に、刑務所は高齢者・精神病者・外国人であふれかえっています。セーフティネットからこぼれた弱者は、ホームレスになる覚悟がなければ刑務所で生涯を終えざるをえないのです。これってなんだかおかしい。犯罪におびえ、セキュリティを強化する相互不信社会は、弱者を排除する社会ではないか。本書は重い問いを突きつけます。

團藤重光・伊藤乾「反骨のコツ」(朝日新書、2007年)
  刑法学の大家にして元最高裁判事である93歳の團藤教授と、理系出身の音楽家という異才の若手学者である伊藤准教授が、憲法、刑法、死刑制度、裁判員制度などをテーマに縦横無尽に語ります。人間の主体性を強調し、能力や性格などが生まれつき決まっているという「決定論」は間違っているとされる團藤教授のベースには、権力に反抗する学問・陽明学があったのです。
  とかく軽薄な人物にスポットライトが当たる今日、知識と思想を血肉としている真の知識人の発言には学ばされます。

福岡伸一「生物と無生物のあいだ」(講談社現代新書、2007年)
  遺伝子のピースを取り除いても何らかのバックアップが働き、機能不全が発現しないこともあるという、生命の不思議。そういえば、脳の機能も同様です。生命とは、DNAによる単なる自己複製システムではない。人はゲノムだけでは決まらない。最近は東大の学生の間でも「決定論」が跋扈しているといいますが、そうではないことを最新の科学が裏付けてくれます。
  それとともに、野口英世をはじめとする本書で紹介されている科学者の生き様は、人が真実に対してどのような態度をとるべきかを問いかけます。

旬報社「労働破壊」シリーズ

第3巻 安田浩一「肩書だけの管理職/マクドナルド化する労働」(2007年)
 「労働破壊シリーズ」の第3弾は、ファーストフード、ファミリーレストラン、コンビニ、紳士服量販店、サラ金という、みなさんの身近にある企業の店長さんたちの物語。早朝から深夜まで、あらゆる雑用を背負わされる毎日。売上目標を達成しない限り帰れなかったり、暴言や暴力でひどく傷つけられることも。それなのに会社は、「管理職だから」という理由で残業代は1円も支払わない。財界が導入をねらっているホワイトカラーエグゼンプション(労働法適用除外)を先取りした姿です。
 そんな無法に、店長さんたちは、仲間とともに、立ち上がり始めています。

旬報社「労働破壊」シリーズ

第2巻 派遣ユニオン「日雇い派遣/グッドウィル、フルキャストで働く」(2007年)
  「労働破壊シリーズ」の第2弾は日雇い派遣で働く若者たちの物語です。ネットカフェから通勤したり、一日に二つ、三つの現場をかけ持ちしたりの日々。ユニオンの役員も実際に日雇い派遣を試してみて、違法と低賃金が横行するあまりのひどい実態にあきれます。このような無法地帯を生み出したのが、財界のたっての要求で進められた労働法の規制緩和にあるのはみなさんもご承知のとおり。なかでも労働者派遣法の抜本的改正は喫緊の課題です。

旬報社「労働破壊」シリーズ

第1巻 大谷拓朗「偽装雇用/立ち上がるガテン系連帯」(2007年)
  偽装雇用や日雇い派遣の現場でぼろぼろにこき使われている若者たち。しかしながら、若者たちは、ただ、あきらめてうなだれているわけではありません。「団結」を体験した彼らは、確実に反撃を開始しています。私たちは社会の不公正に対して、もっと怒るべきであることに気づかされます。そして、若者たちの新たな労働組合活動、いや社会運動が、これからの新しい社会を作り出していく力となるよう、応援していきたいと思います。

雨宮処凛「生きさせろ! 難民化する若者たち」(太田出版、2007年)
  10代でリストカットを繰り返し、21歳のときに愛国パンクバンドに所属していたという著者は、その後作家となり、「現在は新自由主義の中、生活も職も心も不安定さに晒される人々(プレカリアート)の問題に取り組み、取材、執筆、運動中。」(雨宮処凛公式ホームページより)。本書で紹介されている著者自身の体験やインタビューからは、使い捨て労働力にされている若者たちの凄まじいまでの実態が、これでもか、とばかりに明らかにされます。そして、それは決して「自己責任」なんかじゃないんだ、というのが本書からの強烈なメッセージです。

中西新太郎「〈生きにくさ〉の根はどこにあるのか 格差社会と若者のいま」(NPO前夜、2007年)
  子どもを資源と見て、それをどう振り分け、商品価値を高め、社会に出していくのかを追求する。そんな教育が幅をきかす中、「明るく元気にやっていける」ことができない者は、自分がいたらない者だと自認してはじめて世界に存在することが許される。そんな若者を覆う状況の異様さを確かめたいという哲学者のセミナーの記録が本書です。
  「完璧な化石になりたい」(私の言っていることは気にしなくていい。無視してください。)、「彼氏を作らなくては」、そして「感動をありがとう」、「伝説を作ってこい」という没入への駆り立て、等々。思い当たる場面はたくさんあるはず。サブカルチャーにも詳しい著者とともに〈生きにくさ〉の根元を考えてみませんか。

後藤道夫・吉崎祥司・竹内章郎・中西新太郎・渡辺憲正「格差社会とたたかう 〈努力・チャンス・自立〉論批判」(青木書店、2007年)
 格差社会を論じた書物はいまや巷にあふれていますが、その多くは、格差を肯定し、個人の努力を強調するばかり。そんなの、おかしいのでは?そんな疑問に答えてくれるのが本書です。
 「『自立』『努力』『機会均等』などの言葉がもともともっている、幅広い、奥深い内容が、新自由主義にかかると、けっきょくはオカネの量に還元される、きわめて一面的で狭いものへ切り縮められていること、そのことは格差問題だけでなく、人間観全体を一面的で粗暴なものとしていることが、おわかりいただけると思います。」(後藤道夫教授のあとがきより)。ラジカルな分析も含まれていますが、いま必要なのはそうした本質に迫る議論ではないでしょうか。

大阪弁護士会刑事弁護委員会編集「薬物事件弁護ハンドブック」(大阪弁護士協同組合、2007年)
  刑事裁判のなかでも、多くを占める薬物(覚せい剤、シンナー、大麻など規制薬物)事件について、新たな弁護活動の指針を示した書籍です。規制薬物は、依存性が強く、刑事事件を繰り返すことにもなり、単に刑務所で懲役刑に服するだけでは問題解決になりません。治療という視点を刑事裁判にも取り入れる必要から作られた弁護活動のマニュアルです。薬物依存に関わる基礎知識(薬物依存症者の思考パターン、薬物依存者との接し方など)や、各地のダルクや支援組織の連絡先、書籍の紹介、依存症者の体験談など、弁護士だけでなく、依存症者本人や家族の方にも必要な情報が掲載されています。

保母武彦・河合博司・佐々木忠・平岡和久「夕張 破綻と再生」(自治体研究社、2007年)
  財政破綻が大々的に報じられた北海道夕張市。しかし、破綻の原因は、巷で報じられているようなものではありません。主たる原因は、国のエネルギー政策の転換に伴う負担の地元への押しつけ、バブル経済をもたらしたリゾート開発の失敗、そして現在全国の自治体を痛めつけている地方交付税削減にあります。いずれも政府と大企業の責任が問われるものです。もちろん、これに乗った、見逃した、という意味では、夕張市の幹部職員にも、議会にも、そして市民にも責任はあるでしょう。しかしながら、夕張市の「自己責任」だけを強調することは、夕張を「見せしめ」にしようとする政府や財界を免罪し、同様の苦難を各地にもたらすことになるでしょう。

朝日新聞特別報道チーム「偽装請負−格差社会の労働現場」(朝日新書、2007年)  2006年夏に社会に衝撃を与えた朝日新聞社の「偽装請負」追及キャンペーン。そこには、御手洗経団連会長率いるキャノン、松下プラズマディスプレイ(PDP)などの大手企業の内情に迫る特別報道チームのねばり強い取材活動がありました。製造現場で使い捨てにされる請負(派遣)労働者の上に成り立っている企業の繁栄。これに食い込む人材ビジネス会社。そこには現在の社会の矛盾が集約されています。 それにしても、経済財政諮問会議の民間議員として派遣規制のさらなる緩和を主張している御手洗経団連会長は、社会の公正というものをどう考えているのでしょうか。

箕輪登・竹岡勝美・小池清彦「我、自衛隊を愛す 故に、憲法9条を守る−防衛省元幹部3人の志」(かもがわ出版、2007年)
  「何とかこの日本がいつまでも平和であって欲しい。平和的生存権を負った日本の年寄り一人がやがて死んでいくでしょう。やがては死んでいくが死んでもやっぱり日本の国がどうか平和で働き者の国民で幸せに暮らして欲しいなとそれだけが本当に私の願いでした。」
 元衆議院議員・防衛政務次官で、自衛隊イラク派兵差止訴訟の最初の原告となられた故箕輪登氏の裁判での証言の中からご遺族が会葬礼状のために選ばれた言葉です。  「自衛隊は専守防衛を任務とするものであり、そのために志願して若い人が入隊したのです。それを侵略戦争の共犯者にするのか。」(同氏の意見陳述より)。著者らの一貫した誠実な姿勢には深く共感を覚えます。北海道訴訟弁護団事務局長の佐藤博文弁護士の解説も深く心にしみいります。

西谷文和「報道されなかったイラク戦争」(せせらぎ出版、2007年)
  「イラクの子どもを救う会」代表を務め、吹田市職員からジャーナリストに転身した著者は、危険を顧みず現地に赴き、一般マスコミが報道しないイラク戦争の闇を明らかにします。「悪魔の兵器」・劣化ウラン弾や「チャイルド・キラー」・クラスター爆弾の、言葉では言い表せないほどの残虐さ。まさにこれはヒロシマ・ナガサキ。これをためらいもなく使う米軍とこれを支持する日本政府。
  まずは本書を読んでください。そして写真を見てください。それでもイラク戦争は、そして自衛隊派兵は正しかったと言えるでしょうか。
  違法な侵略戦争だったことが世界的に明らかになった現在でも、ブッシュに追随して過ちを認めない政府には憤りを通り越して情けなさを感じます。

有森隆+グループK「『小泉規制改革』を利権にした男 宮内義彦」(講談社、2006年)
「宮内は何を狙って規制緩和を推進したのであろうか」(帯封より)。本書は、「規制緩和の旗手」と「改革利権の最大の受益者」の一人二役を演じた宮内義彦・オリックス会長の「政商」ぶりを、多面的に明らかにします。
  村上世彰・元村上ファンド代表や奥谷禮子・ザ・アール社長など、マスコミを賑わす人々とのさまざまなつながりが描かれているのも興味深いところ。規制緩和・構造改革がいったい誰のためのものだったのかがよくわかる一冊です。

毎日新聞社会部「縦並び社会 貧富はこうして作られる」(毎日新聞社、2006年)
「格差社会」の現実をえぐり出す、毎日新聞社会部の渾身の取材の結晶。最近では、「勝ち組」「負け組」という言葉が揶揄的に用いられることすらありますが、そうした態度は本書の突きつける事実の前には色を失います。「小泉政権の『改革』の末に行き着いた社会は、敗者を奈落の底まで突き落とし、『機会の平等』さえも奪おうとしている」(あとがき)。それが、いったいどうやって正当化できるでしょうか。
  実名報道へのこだわりにも迫力を感じます。「格差社会と匿名社会は、他人への視点を欠く意味で、底流でつながっている」との認識からです。
  新聞人の矜持が伝わってくる、現代の必読文献です。

中西新太郎監修・新しい生き方基準をつくる会著「フツーを生きぬく進路術 17歳編」(青木書店 2005年)
  今や若者の多くがフリーターでしか働けない社会。若者はもがき苦しんでいます。これは、そうしたまじめな若者を応援するために、まじめな若手研究者が一生懸命に書いた本。大学(文系・理系)、短大、専門学校別に進路選択や職業選択のポイントを伝授し、困ったときの相談先も教えてくれます(首都圏青年ユニオンへのインタビューも)。自分のたどってきた道とは違った世界を教えてくれるのも興味深いところです。

吉田満「戦艦大和」(角川文庫 1968年)
  著者は、学徒出陣で戦艦「大和」の艦橋士官に配置され、無謀な特攻の中で九死に一生を得ました。吉川英治氏との出会いを通じて戦後、再出発するために書き記したという「戦艦大和の最期」は、圧倒的なリアリズムで戦場の現実に迫ります。また、戦後、この文章が世に出るまでの経過を記し、アメリカ人の戦争感覚を考え、戦争責任について自問する著者の姿勢は(個別の意見の賛否は別として)ひたすら誠実です。こうした誠実さがないがしろにされているところに今日の改憲論の跋扈があります。

小森陽一「心脳コントロール社会」(ちくま新書 2006年)
「善か悪か」、「快か不快か」といった二元論は、人をゼロ歳児の状態に退行させるもの。これはマーケティング手法として開発された「心脳コントロール」の手法ですが、ブッシュ政権も小泉政権も、そしてテレビも新聞も、こうした技術を駆使して、人々をマインドコントロールしています。「九条の会」事務局長を務める著者は、ご自分の専門である文学もまた、こうした「騙しの手口」として悪用されていることに怒ります。こうした怒りを私たちも共有したいと思います。

香山リカ「いまどきの『常識』」(岩波新書 2005年)
  「バカ」「自己責任」など、政治やマスコミの舞台でまかり通っている「いまどきの『常識』」はどこまで正しいのでしょうか?マスコミでも活躍中の精神科医である著者の分析はなかなかのものです。そのために、しばしば攻撃され、悩んでいるという告白には改めて社会の病理を感じさせますが、著者には今後もこうした感性を大事にして活躍してほしいと思います。
斎藤貴男「ルポ改憲潮流」(岩波新書 2006年)
  テロとのたたかい、国会議員、財界、靖国、マスコミ、そしてアメリカ。著者はさまざまな分野に切り込み、果敢にインタビューを試み、改憲論の底流をなすさまざまな問題を浮き彫りにしていきます。自らの改憲論を語る読売新聞論説委員長と、改憲潮流を楽観視する朝日新聞論説主幹へのインタビューには興味深いものがありました。
岡田尊司「人格障害の時代」(平凡社新書 2004年)
  行動や感情をコントロールするのが苦手な子どもが増えていると言われますが、実は大人にこそ問題があるのではないか。物事の一側面だけを問題にして、自分に都合のいいことは賞賛し、都合の悪いことは非難するというやり方は「人格障害」ではないか。精神科医である著者の分析から多くのことに気づかされます。そして、「人とのつながりと体験に喜びと価値を見いだせる社会を築き直さなければならない」というのが著者の結論です。
海老原勇「建設労働と石綿・アスベスト−肺癌・悪性中皮腫・石綿肺予防と補償のために−」((財)労働科学研究所出版部 1996年)
 社会をゆるがす石綿(アスベスト)問題。特に建設労働者の被害は深刻です。本書では、石綿問題の第一人者である医師が、石綿(アスベスト)をめぐる医学上の基礎知識を分かりやすく解説してくれます。それにしても、本書が世に出て9年もたつのに、政府や経済界が十分な対策をとってこなかったことに憤りを感じます。
西谷敏「規制が支える自己決定−労働法的規制システムの再構築」
(法律文化社2004年)
 労働法学会の重鎮であり、私たち「民主法律協会」会員が尊敬してやまない西谷教授の最新刊。本書では、労働法の使命は「使用者の単独決定の規制」にあり、そのためには、法律、労働組合、そして個人の自己決定がいずれも重要であるとして、近年、労働法改悪を進めてきた規制緩和論者を批判されています。
 労働法だけでなく、憲法、民法、経済学、経営学、社会学、政治学、哲学、さらには刑事法など多彩な角度から論じた、その奥の深さには圧倒されます。
小林康二「地球のすみずみに元気の出る笑いを」(浪速社 2005年)
 著者の小林さんは、労働運動を定年退職したあと、「笑工房」を立ち上げ、その代表として、社会風刺の笑いを全国津々裏に届けています。弱いものいじめで笑いをとる吉本興業に対抗して今日も奮闘する「笑工房」をどうぞごひいきに。
森岡孝二「働きすぎの時代」(岩波新書 2005年)
 今や、労働者は二極分解。正社員は成果主義のもとで競争をあおられ、他方でパートアルバイトはあまりの低賃金に生活できないことから、いずれも長時間労働が蔓延しています。そしてこれをあおる「消費者資本主義」。なぜ、こんなひどいことになっているのか、どうすればこのような悪循環から脱出することができるのかを、「民主法律協会」の会員であり、労働基準オンブズマンや株主オンブズマンの代表として著名な活動派学者である森岡教授が、さまざまな角度から切り込みます。
こうの史代「夕凪の街 桜の国」(双葉社 2005年)
 ブッシュは核兵器の先制使用を公言して恥じるところがありません。そこに欠けているのは、核兵器がどれだけ人間を苦しめるのかについての想像力の決定的な欠如です。
 人類史上初めて核攻撃にさらされた広島の地獄図は「はだしのゲン」などでも描かれてきましたが、この作品は、戦後の広島に生きる人びとの姿を、孫の代にまで視点をのばして描いたもの。漫画家のみなもと太郎さんは「実にマンガ界この10年の最大の収穫だと思います」と絶賛されています。
日中韓3国共通歴史教材委員会「未来をひらく歴史」(高文研 2005年)
 「新しい教科書をつくる会」のように、日本の戦争責任を認めるのは「自虐史観」だと決めつけて、過去の事実から目を背けていては、多大な被害を与えた近隣の国の人びととの信頼関係は構築できません。過去の事実を正確に捉えるためには、関係各国からの多角的な分析が有効です。本書は、日中韓3国の歴史研究者が史上初めて一堂に会し、議論を重ねて、3国共同の近代歴史教科書を編んだもの。まさに「未来をひらく」ための貴重な成果といえましょう。
高橋哲哉「靖国問題」(ちくま新書 2005年)
 「靖国問題」とはいったい何か。著者はこれを、「感情の問題」、「歴史認識の問題」、「宗教の問題」、「文化の問題」、「国家追悼施設の問題」に分けて、「論理的に」解明します。靖国問題を徹底理解するために最適のベストセラー。
姜尚中/テッサ・モーリス−スズキ「デモクラシーの冒険」(集英社新書 2004年)
 著名な知識人である姜尚中・東大教授とテッサ・モーリス−スズキ・オーストラリア国立大学教授のブレーンストーミングな対談。世界を覆ったイラク戦争反対の声がかくも無視されたのはなぜか、という疑問から出発して、人間生活のすみずみまでが多国籍資本により市場化させられていく中で民主主義が空洞化させられていることの醜悪さと、今後の民主主義の再生が語られます。
渡辺治「憲法『改正』 軍事大国化・構造改革から改憲へ」(旬報社 2005年)
 2005年9月の衆院選では自民党が300議席近くを獲得し、民主党も改憲に大きく舵を取った今日、憲法はかつてない危機にさらされています。そこでは、9条だけでなく、全面改憲がもくろまれています。それにしても、なぜ、今日、これだけ改憲への動きが強まっているのでしょうか。著者はこれを、軍事大国化と構造改革の両面から解明します。憲法問題を考えるために必携の書。

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