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 愛すべき公務員−「県庁の星」(弁護士 城塚健之)

  エリート県庁職員、野村聡は、知事の思いつき企画である「民間との人事交流プロジェクト」により、ダメスーパーに派遣される。本名は覚えてもらえず、「県庁さん」と呼ばれ、当初は役人根性丸出しで職場で浮いていた彼は、むりやり彼の指導担当にされた「裏店長」ことパートの二宮泰子に日々怒られながらも、スーパーを盛り上げようとがんばる。そこに襲いかかった店舗統廃合・全員解雇の危機。さて、野村は、二宮は、どうする・・・

  原作は桂望実の同名小説。ビッグコミックスペリオールに連載されたコミック版(作画 今谷鉄柱、小学館)では、「県庁さん」のエリートらしい場面は最初のころだけで、あとはひたすらズッコケ三枚目の役回りである。だから、最初のエリートの設定がやや中途半端な感じがするのだが(これに対し、同期の桜井は、徹頭徹尾、打算的なエリートとして描かれている)、ピント外れながらも、いつも一生懸命な「県庁さん」の姿に、最初は冷ややかだった周囲の同僚も、いつしか彼を信頼するようになり、みんなが一丸となって、ついにスーパーの再建を果たす。ここまでが第1部。
  第2部では、「県庁さん」は、赤字に苦しむテーマパークに、これを「潰す」使命を受けて送り込まれる。しかし、ここでも「県庁さん」は、現場を支える人びとに共感し、逆に知事を説き伏せて何とか立て直しための猶予をもらう。そして、天下り役員を一掃し、さまざまな人びとの力も得て、奇跡的な黒字化まであと一歩と迫る。ところが、そんな矢先に、知事が収賄で退陣。新たに登場した「改革派」の女性知事は、「公約」をふりかざしてテーマパーク潰しを強行し、現場の職員を解雇してしまう。ショックを受けた「県庁さん」は、「一度決定したことは間違いに気づいても正さず、ひたすら前例を守って体裁を整えることだけに必死なのが役人だとしたら、そんな役人、ぼくはやめます」と宣言し、「環境課」に新天地を求めて、住民のために日々がんばり続ける。こうした主人公の姿は、ビッグコミックの伝統ともいうべきヒューマンストーリーの一つのパターンを踏襲している。

  実は、こうした公務員の姿は決してマンガの世界だけのものではない。私はこの10数年、自治労連という自治体労働組合とおつきあいをしているが、そこで、国民・住民のために、日夜、骨身を削って働くまじめな公務員を数多く知ることになった。一部に不心得者がいるとしても、あるいは官僚的と批判を受ける部分はあるとしても、多くの公務員は本当にまじめに働いている。こうした姿を見ていると、近年流行の「公務員バッシング」がいかに底の浅いものであるかがよくわかる。「官はだめで民はよい」と決めつける御仁には、消費者を騙した雪印やミートホープ、介護を食い物にしたコムスン、そして電機メーカーに蔓延する偽装請負など、民間で発生している数々の不正はどう映っているのだろうか。
  他方、織田裕二×柴咲コウのコンビでヒットした同名の映画ではキャラクター造形が微妙に異なる。まあ、織田クンはあくまで二枚目だから、コミック版のようにズッコケとはいかない。むしろ、嫌みなほど完璧なエリート姿がよく似合っている。だからこそ、生き方を変えるためには、県政と癒着した建設会社社長の娘と婚約し将来を嘱望されていたのに、婚約を破棄され、昇進の道も絶たれて、すべてを失い挫折するという設定が必要だったのだろう。
  惜しむらくは、いずれのストーリーにも自治体労働組合の姿が見えないことである。私が長らくおつきあいをしている自治労連は、労働条件の向上だけでなく、憲法に根ざした地域住民の幸福追求を目的としている。これを「民主的自治体労働者論」という。こうした姿はもっともっと国民に知ってもらいたい。
  余談だが、映画版では、生き方を変えた「県庁さん」が、「オンブズマン」とつきあい始め、要注意人物としてにらまれるようになる。実際には、「オンブズマン」といってもいろいろなのだが、作中に登場する「オンブズマン」は、そろいの黄色いジャンパーを着ていて、思わず革新陣営の「明るい○○県をつくる会」を連想させられる。



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