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資産運用話にご用心 (弁護士 河野 豊)

 生活必需品の物価が上がっていますが、年金の手取り額は逆に下がる一方のようで、お年寄りでなくても将来の生活に不安はつきものです。
 そんな不安につけ込み、資産運用をネタにして荒稼ぎする業者が後を絶ちません。


 古くは株式の頻繁売買で手数料を稼いでいた証券会社がありましたが、株式の現物であれば、どこそこの株を何株買い、あるいは売りということで、その仕組みは比較的分かりやすいですし、株式には配当や株主優待というメリットがありますから、運用で損をしても、長い目で見れば得をすることもあります。
しかし、同じ株式でも信用取引をするのは危険です。これは、手持ち資金の数倍の取引ができるので儲かる時には儲けが大きくなりますが、損する時には損も大きくなります。それだけではなく、信用取引は手持ち資金を担保にして取引をしますので、基本的には借金と同じです。要するに、借金してまで株を買うという点で、資産運用というよりはギャンブルに近いものと言えるでしょう。

 他方、外貨預金というものがあります。最近の円高傾向からして、今こそ外貨預金を始めるチャンスだと考えている方もいらっしゃるかも知れません。しかし、これも、円高が更に進んで為替変動幅が利息よりも大きくなると、いわゆる元金割れという事態が生じますし、いつでも解約できるというものでもありません。ですから、預金というよりはギャンブルに近いものと言えます。
 これのギャンブル度を進ませたものに、外貨証拠金 (FX) 取引というものがあります。これは、預金ではなく、単純に外貨を売買する取引ですが、信用取引と同様に、手持ち資金(証拠金)の数倍もの外貨を売買できますので、為替変動次第では、大儲けもできるし、大損もするわけです。

 さらに危険なものに、先物取引というものがあります。これは、例えば6ヶ月後に小麦の価格が上がると思えば、6ヶ月後に決済する予定で小麦を購入しておくことです。と言いましても、現実の小麦を買うわけではなく、6ヶ月後に小麦を売る権利を買うだけです。今、1s分を100円で買っておいたとします。それが6ヶ月後に150円に上がっていたら50円得しますが、逆に70円に下がっていたら30円損するだけで、実際に小麦が動くわけではありませんから、まさにギャンブルですね。

 これを更に応用したものに、海外先物取引というものがあります。これは、海外市場で先物取引を行なうことで、国内での先物取引に加えて、為替変動のリスクも負うことになります。つまり、今100sの小麦を100ドルで買ったところ、6ヶ月後に110ドルに上がっていたら10ドル儲かることになりますが、その6か月で円高が進み、1ドルが100円から80円になっていたらどうでしょう?100ドルが110ドルになっても、1万円が8800円になったことになりますので、結局損していますよね。海外先物取引というのは、このように複雑怪奇なもので、素人には何がなんだか分かりません。
一時期、この海外先物取引の被害が増えて社会問題になったため、最近はかなり減ってきているようです。

 これに対し、最近被害が増えているものが、いわゆるロコ・ロンドン貴金属取引というものです。これは、先物取引ではなく、リアルタイムの価格で貴金属の取引を行なうとの説明を受けますので、危険性が少ないのかなと錯覚させられがちです。ところが、これは実際に取引をするのではなく、ロンドン市場での価格で取引したことにして、その差額を奪い取る商法なのです。つまり、業者側から見れば、今日のロンドン市場では1gの金が20ドルだったのでそれを買ったことにし、3日後のロンドン市場では1gの金が25ドルになったのでそれを売ったことにし、その差額の5ドルを相手に支払わせるといった具合です。まさに競馬のノミ行為と同じですね。5ドルやそこらの金額であれば、ゲームをしたということで笑って済ませられるかも知れません。しかし、これは、先ほど説明した証拠金取引を組み合わせることで、手持ち資金の数倍から数10倍もの取引をしたことにし、さらに為替変動を付け加えることで、アッと言う間に数百万円もの資産を取り上げられてしまいます。その計算方法は素人には分かりません。と言うか、ロンドン市場での金の価格なんてリアルタイムで知っている人がどこに居ますか?結局は、その仕組みはおろか、取引をしたのかどうかさえ分からないままに多額の資産を取り上げられてしまうわけです。
 最近、私は、80代の一人暮らしの女性が、老後のための蓄えであった定期預金を解約させられ、10日間で1000万円以上ものお金をロコ・ロンドン貴金属取引業者に奪われた事件を担当しました。これはなんぼなんでも詐欺&賭博で違法である、全額返金しないと関係者全員を刑事告訴すると言い切って、その大部分の返金をさせることで解決しました。裁判している間に相手業者が倒産、関係者が夜逃げしてしまえば元も子もないと考えて、泣く泣く示談したものです。


 くれぐれも資産運用話には気をつけましょう。よく知らない人、例えば住所も本名も分からない人から、電話勧誘や訪問販売で何十万円ものお金を渡すのは、絶対にやめましょう。

 


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