大阪市内に数ヶ所ある、ホームレスのための「自立支援センター」へ法律相談担当として赴いた。
自立支援センターは大阪市が設立した施設で、ホームレスに追いやられた人が自立するために、原則として3ヶ月間暮らすことができる施設である。大阪弁護士会はここでの法律相談事業を2002年8月から行なっている。
ここの入居者が抱えている最も多くの問題は多重債務である。生活に困って、あるいは、事業に失敗してできた借金が原因で家庭が崩壊したり、借金取りの過酷な取立てに耐え切れずに夜逃げしたりしてホームレスになった人が多い。この場合、借金問題さえ解決すれば、再び職に就いて自立することが可能である。
その中の一人、Aさんの場合、消費者金融業者4社から約50万円ずつ、合計で約200万円借りているとのことであった。聞いてみると、借り始めたのはいずれも20年ほど昔、約2年前にリストラされ、返済できなくなったので夜逃げしたとのことであった。そして、この度、自己破産をして人生をやり直したいとの希望を持って法律相談に来たわけである。
債権者はいずれも大手で、テレビでも頻繁に宣伝している業者である。中には、東証一部に上場しているところもある。 しかし、利息制限法という法律に違反する高金利を取り立てている悪質業者であることには変わりない。Aさんは、このような業者が上場できる異常社会の犠牲者であると言える。
私は、Aさんが、法律上は支払わなくてもよい「利息」を、長い間、真面目に支払ってきたことからして、Aさんにはもう債務が残らないと確信した。そこで、自己破産を考えるのは後にし、まずは債権調査を行なうことの依頼を受けた。
案の定、債権者は債権調査に協力しない。事実が判明すれば、多額の過払金の返還を迫られるからである。「初めて貸し付けたのは5年前のことである」、「古い取引記録は廃棄した」という大嘘を平気で告げ、途中からの取引記録しか出してこない。
私は、提出された取引記録の矛盾(例えば、契約当初の貸付額が23万5342円といった端数であること等)をつき、取引継続中の記録廃棄が行政処分の対象になることを警告し、記録開示を迫った。すると、4社のうちの2社は開示請求に応じ、過払額の7割で示談して欲しいとの懇願をしだした。
Aさんが、支払わなくてもよい「借金」に苦しみ、ホームレスにまで陥ってしまったことを思うと、ありもしない貸金を取り立てる「なんちゃって債権者」に譲歩するわけにはいかない。しかし、Aさんが自立支援センターに居られるのは3ヶ月間だけである。解決を急がなくてはならない。そこで、Aさん自身の覚悟を得た上で、自立支援センターの職員へ入所期間の延長を依頼しつつ、4社相手に過払金請求訴訟を起こすこととした。「債権者」に対しては、過払金に対する法定利息の請求を付加し、取引記録を開示しない2社に対しては、不開示による慰謝料と弁護士費用の請求も付加した。
すると、裁判所から訴状が届けられた直後に、全「債権者」から和解の申出があり、第1回目の裁判期日までに合計約200万円の過払金を全額回収することができた。
Aさんは、回収した過払金で新居の敷金を支払い、必要最低限の家具を揃えることもできた。また、住民票を入手することによって就職をすることもできたそうである。今後は、2度と悪質な金融業者から借金をすることはないであろう。
参考リンク 「取扱事件の説明」→「多重債務」も参照ください。 |