10名の解雇は無効との判決
2006年9月6日、大阪地方裁判所は、蛍光灯や電撃殺虫器などのメーカーである関西金属工業(大阪市淀川区)で働いていた10名に対する「変更解約告知」(解雇)を無効として、労働者側勝訴判決を命じました。
本件はこれに先立つ仮処分でも勝利しており、二度目の勝利です。
熊本県人のたたかい
この会社は、もともと松下電工の一次下請として成長してきた中小企業ですが、労働者はなんと全員が熊本県人です。大阪では九州出身者が多数働いていますが、熊本県人ばかりというのも珍しいのではないでしょうか。これは先代
の社長が「熊本県人はまじめでよく働く」との信念から、熊本県人ばかりを採用していたことによるそうです。裁判の原告らは、中学卒業後、「金の卵」として、夜行列車に乗って集団就職し、高度経済成長を支えてきました。素朴で、
誠実な彼らを、この事件の支援共闘会議の議長である植田保二・大阪労連議長は、「三丁目の夕日」から抜け出してきたような人たちだと表現しました。まさに至言です。このような彼らですから、周りの人たちは、つい、応援してあ
げなくちゃ、と思って集まってくるのです。同じ熊本県人である私としても放っておけず、解雇以来2年半、共に闘ってきました。
解雇事件のあらまし
事件の発端は、2002年11月に会社がメインの取引先である松下電工から取引を打ち切られ、赤字になったことでした。そこで会社は、2004年3月、(1)6名の希望退職募集を行うとともに、(2)希望退職者が足りない場合には、勤続年数25年以上の従業員25名を対象に、一斉に賃金を30〜35%ダウンさせる「変更解約告知」を行い、(3)たとえ全員が「変更解約告知」に応じても残留できるのは「有能の士」のみで、あとは6名に至るまで整理解雇するという合理化計画を発表しました。
ここで「変更解約告知」という耳慣れない用語が登場していますが、これは、法律上の制度ではありません。個別労働条件変更のために、「解雇+新しい労働条件による新しい労働契約の申込み」というワンパッケージの手法を認めよ
うと一部の学者が提唱している概念です。こんなものを認めて良いかについては学者の見解も裁判例も分かれていますが、いずれにしても、ここでいう「変更解約告知」とは、労働者が承諾すれば必ず採用されるというものです。とこ
ろが、会社のいう「変更解約告知」には、そういう保証はないというのですから、これは「ニセ変更解約告知」というほかありません。
会社にはJMIU(全日本金属情報機器労働組合)の分会がありました。彼らは、「賃金カットで全員で痛みを分かち合うのはやむを得ないが、誰が整理解雇されるかわからないものに応募するわけにはいかない」としてこれに応じませんでした。
ところが、二代目の現社長は、とにかく労働組合が嫌いで、組合との事前協議約款を無視し、組合が経営資料を示すよう求めても、肝心な数字を墨塗りしたものを見せて手書きで書き写せと言い放ち、いったん手続きを中止して話し
合いましょうという申し入れにも耳を貸さないという、問答無用の姿勢で、その組合員10名を解雇してしまいました。そこで私たちが組合員の代理人として提訴することになりました。
赤字会社だからといって安易な解雇は許されない
大阪地裁は、会社のいう「変更解約告知」は実質的には整理解雇に近いが、会社は10名を解雇しなければならない必要性は立証はしていない、などとして、労働者側完全勝訴判決を出しました。
会社が赤字に陥ったのは気の毒ではありますが、それは労働者が悪いからではありません。したがって、そのつけを労働者だけに押しつけることは許されません。赤字会社だからといって安易に整理解雇が許されるわけではないので
す。ある意味では当たり前の結論ですが、10名もの乱暴な解雇を阻止したことには大きな意味があります。
会社はただちに大阪高裁に控訴しました。会社の姿勢は頑迷というほかなく、解決にはもう少し時間がかかりそうです。しかし、「三丁目の夕日」から抜け出してきたような彼らを支える運動も広がりつつあります。控訴審でも私たち
はもう一がんばりする所存です。
参考リンク 「取扱事件の説明」→「解雇」も参照ください。 
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