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アスベスト(石綿)被害に対する隙間のない救済を求めて (弁護士 奥村昌裕)

大阪泉南地方の石綿被害
 2005年6月のクボタのアスベスト被害報道をきっかけに、アスベスト被害は注目を浴び始めました。
 その被害の1つに、大阪の南部、和歌山に近い地域である大阪府泉南市、阪南市(いわゆる泉南地方)の石綿紡織業による被害があります。泉南地方は古くから紡織業が盛んであったこともあって、石綿の紡織業も発展しました。当時泉南地域には中小・零細の石綿事業所が占めており、現在は全ての石綿事業所が廃業しています。
  泉南地域の石綿被害は知られておらず「沈んだ被害」だったのです。

被害の掘り起こし
 私が所属する大阪じん肺アスベスト弁護団(以下「弁護団」といいます)は、2005年11月、大阪民主医療機関連合会の医師とともに、泉南市において「医療と法律の個別相談会」を実施しました。これは、相談会場にレントゲン車を配置し、相談に来た人の問診・医療相談及び希望者に対してレントゲン撮影をするとともに、弁護士による法律相談(労災申請やじん肺管理手帳の申請など)を同時に行うという画期的なものでした。
 すると、驚くべき被害実態が明らかになりました。レントゲンを行った被検査者83名中53名が石綿による健康被害を受け、肺に異常があるとの診断結果が出たのです。
 もちろん私も相談会に参加しました。この時私はまだ弁護士登録をして2ヶ月弱でしたが、相談に来られた方はそんな私に対しても、今まで聞いてもらえなかった体の不調や苦しみを真剣に訴えました。その言葉に耳を傾け、救済の道があることを話すと、相談に来られた方は多少なりともホッとして帰ったのではないかと感じました。被害者の力になる弁護士の使命を実感し、弁護士業にさらなる魅力を感じた時でもありました。

被害救済に向けた弁護団活動
 被害実態を目の当たりにし、被害救済の必要性を強く感じた弁護団は、被害救済に向けて様々な取組みを本格的に始めました。
 相談会の継続はもちろん、大阪府に対する「大阪府下の石綿被害対策に関する緊急申し入れ」や、「石綿新法」制定前には国会参議院議員(環境委員会メンバー)に対し、石綿被害の救済と調査、新法の救済水準の引き上げを要請しました。
 そして、被害者の掘り起こしを継続的に行う中、同年5月26日、原告8名(死亡者を含めた被災者8名)で国に対して国家賠償訴訟を提起しました。日本で初めての国家賠償の集団訴訟です。現在は同年10月12日に国家賠償訴訟2次提訴を行い、原告数は16名におよんでいます。
 大阪泉南アスベスト国家賠償訴訟は、被害者の個別救済を図ることはもちろんですが、それとともに、石綿新法による不十分な救済を是正させ「隙間のない救済」を求めるものなのです。そして、水俣病や薬害、トンネルじん肺被害など、過去同じ過ちを幾度となく犯しても、何ら対策を講じない国に対して、2度と同じような被害を繰り返さないことを訴えているのです。
 しかし、石綿被害は泉南地域固有の問題ではありません。建設業、造船業、電気工など、多くの業務に石綿は扱われ、実際に石綿を原因とする疾患に多くの人が罹って苦しんでいます。
現在、弁護団では、労災申請や新法申請など各種行政手続、および大手ゼネコン2社に対して労働者の被害救済を求めて損害賠償請求訴訟をしているほか、造船工や電気工などの損害賠償を求めて個別に企業と交渉を進めています。

最後に−私の経験・感想
 私は、弁護士登録をしてすぐこの弁護団に入り、瞬く間に1年が過ぎました。最初は「法律相談ってどうすすめるの?」「労災申請って何が必要なの?」「記者会見なんてとんでもない!」などと、戸惑う日々でした。しかし、被害を目の前にして、なんとか被害者の痛みを和らげたい、もっと多くの人に石綿被害を知って欲しいという思いでこの1年を走ってきたと思います。
 そのなかで夏にはある大学のアスベスト研究グループに同行してアメリカへ行き、アメリカのアスベスト被害の実態と被害対策の調査をしてきました(英語は話せませんが…)。これは、私に日本における被害救済の必要性を実感させるものであり、とても刺激になるものでした。また、全国の弁護士と交流を持ち、たくさんの経験と知識を聞くことができました。
 そして、今。この弁護団で被害者の話を聞き、何度も現場に赴き、弁護団会議で議論を重ねるなど、多くの経験をして心身共にたくましくなったのではないかと思っています。この経験を活かすべく、さらなる被害救済に向けて弁護団活動に取り組みたいと思います。
 綿状になったアスベスト                    アスベスト鉱石

 
参考リンク
大阪じん肺アスベスト弁護団


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