布団や貴金属を訪問販売で購入してしまった方が、支払を止めたいという相談に来られ、クレジット会社から支払の訴訟を起こされ、いずれも商品残代金を支払うことは免れて解決することができた事案について紹介します。
布団を買ったAさん
相談者Aさんは、自宅を訪れた業者に「無料で布団を診断します」と誘われ、診てもらったところ「ダニだらけ」などといわれて、新たに布団を購入する契約書を交わしてしまいました。その後も、布団カバーなどの購入も勧められ、これも契約書を交わしました。このとき、クレジット会社2社と割賦販売の契約を締結しました。その後、ご自身で、消費者契約法による取消の主張をして、業者と交渉しましたがうまく行きませんでした。結局、クレジット会社2社から支払を求める訴訟を起こされました。
業者に交渉を開始した時点で、既に契約日から8日は経過していたことから、Aさんはいわゆるクーリングオフは不可能と思われていました。
「法定書面」でなければクーリングオフ期間は開始しない
しかし、裁判においては、@契約締結の過程において、販売担当者から威迫や困惑を受けたということで消費者契約法4条1項1号に基づいて契約を取り消すという主張と、Aクーリングオフの主張もしました。すなわち、「クーリングオフは契約日から8日間」と言われていますが、正確には「法定書面の交付から8〜20日間内(日数は商品により異なります)に解除の意思を相手方に伝える」ことです。通常、解除の通知は、配達証明郵便や内容証明郵便で相手方に送付します。
ここで大事なのが、「法定書面の交付」ということなのです。この「法定書面」としては法令で決められた事項が記載されていなければならず、そのような記載がなければ、いくら書面の交付を受けたとしても、それは「法定書面」の交付を受けたことになりません。すると、8〜20日の期間が開始されていないことになり、いつでもクーリングオフができることになるわけです。
では、「法定書面」に必要な記載事項とは何かと言えば、例を挙げると
ア 商品の引渡時期(同法5条1項・同法4条3号)
イ 契約年月日〔特定商取引法5条1項・同法4条5号・特定商取引に関する法律施行規則(省令)3条3号〕
ウ 商品名及び商品の商標または製造者名(同法5条1項・同法4条5号・同省令3条4号)
エ 商品の型式または種類(同法5条1項・同法4条5号・同省令3条5号)
などの記載です(詳しい記載事項は、特定商取引法4条各号、同省令3条各号をご覧ください。) 今回、Aさんが受け取った「契約書」には、「商品名・型式」という欄に「布団一式」と記載があるだけでした。これは「商品名」とは言えても、上記の「商品の商標または製造者名」や「商品の形式または種類」の記載としては不備となります。
裁判に現れた販売担当者は、「クレジット会社の指導を受けて契約書を作成しており、不備はない」旨の主張をしていましたが、そのような指導が不適切なことは法令上明らかで、そのような指導による契約書も「法定書面」とは認められません。
裁判所で和解解決
裁判所は上記のことを十分理解していたと思われ、裁判上の和解を勧め、結局、Aさんは解約手数料名目で若干の負担をしただけで、クレジット残代金の支払を免れるという結果で終わりました。
ダイヤモンドを買ったBさん
数百万円のダイヤの指輪を購入したが、数十万円ほど支払った後に支払を止めて、契約を解除したいというBさん。販売会社の担当者と交渉していたようですが、結局は、クレジット会社から立替残代金請求の訴訟を起こされ、私に相談に来られました。
Bさんが販売担当者から渡された「契約書」を見ると、法定書面とは到底認められない不備がありました。Bさんが受け取った「契約書」には「商品名・型式」という欄に「PtダイヤR」(プラチナダイヤモンドリングの意)と記載があるだけでした。これは「商品名」とは言えても、上記の「商品の商標または製造者名」や「商品の形式または種類」の記載としては不備となります。
Bさんも裁判所で和解
そこで、裁判上で、ダイヤの指輪自体の問題やその契約締結の過程(販売担当者から威迫や困惑を受けたということ)を問題視して消費者契約法4条1項1号に基づいて契約を取り消すという主張とともに、クーリングオフの主張もしたのです。
この事案も、Aさんと同じように、裁判所から和解の勧めがありました。結局、Bさんは解約手数料名目で若干の負担をしたものの、既払い分の返還を受けるという内容で解決することができました。
契約書の確認を
AさんやBさんの事案からも分かるように、「契約書」にいろいろ記載しているとしても、「商品の商標または製造者名」や「商品の形式または種類」の記載まできちんとしているかどうかをよく確認する必要があります。販売担当者の理解不足や手抜きで不備になるように思われます。
このように「契約書」として渡された書面に必要な記載事項がなければ、「法定書面」とは言えないことから、いつでもクーリングオフができ、裁判を起こされても何らおそれることはないことが分かってもらえたと思います。さらに、Bさんの事案からも分かるように、代金の一部を支払っていたとしても、クーリングオフを前提に、支払済みの代金すら返還させることができます。契約をした日からもう何日も経っていたり、既にお金も支払いはじめているとしても、クーリングオフすることを躊躇する必要はないのです。
「もうクーリングオフはできないのでは」と思っている方も、今一度受け取っている契約書を見て、「法定書面」として必要な事項が記載されているかを確認し、不備があれば、クーリングオフができるということになります。
参考リンク 「取扱事件の説明」→「訪問販売」も参照ください。 |