企業主導の雇用流動化
最近、「雇用」ではなく、「請負」や「委託」などという働き方が増えているのは労働問題に多少とも関心のある方ならご存じのことと思います。もちろん、これは、働く側ではなく、働かせる側のニーズによるものです。「雇用」でなければ、労働法の適用がないので、使用者は働かせ放題。残業代を支払う義務もなければ、社会保険料の使用者負担もない、解約(解雇)も自由、労災にも責任を負わないということで、企業にとってはまことに都合がよろしいのですが、働く者にとってはたまったものではありません。もちろん実質的に労働者であれば、労働法の保護が受けられ、使用者にはさまざまな規制が課されます。にもかかわらず、形式をたてに使用者が責任を免れようとするやり方が横行しています。これはその一事例の報告です。
「代行店」は労働者
ビクターサービスエンジニアリング(千葉県浦安市)は、日本ビクター(横浜市)の子会社で、テレビ・ビデオ等の家電製品の出張修理を行っている会社です。そこには、出張修理業務の大半を担っている「代行店」と呼ばれる労働者がいます。「代行店」という名前ですが、訪問先や訪問時刻は会社から指定され、工具も貸与され、部品も支給され、修理手順から接客マナーまで指示され、会社指定の制服と名札をつけていくのですから、どこから見ても会社から指揮命令を受けている労働者です。彼らは朝8時半頃から晩の8〜10時頃まで働いてきました(こんなに遅くなるのは夜間修理を終えてから会社に戻って報告業務をしなければならないからです)。こんなに長時間働いてろくに休日もない生活を続けて、会社からもらう「報酬」は手取りで15万円〜40数万円程度。同年代の正社員の3分の2程度です。ところが会社はコスト削減のために「代行店」の取り分をさらに減らしました。しかも、当初は2年だけという約束だったのに、会社は約束を反古にして削減期間を延長したものですから、これでは家族を抱えて生活できないと、彼らはJMIU(全日本金属情報機器労働組合)に相談し、その指導の下に分会を結成して、会社に団体交渉を申し入れました。しかし、会社はこれを拒否し、「すぐに帰らなければ警察を呼びます」という態度をとりました。そこで、2005年3月、分会は、地本・支部とともに、大阪府労委に救済申立をしました。 そして、大阪府労委は、2006年11月17日、「代行店」は労組法上の労働者であると明快に認めて、会社に団体交渉と謝罪文の手渡しを命じました。
もっとも、会社は、命令後ただちに「組合との団交に応じる考えはない」とマスコミ各社にコメントし、中労委に再審査を申し立て、独自の論理を展開して、徹底的に争う姿勢を崩していません。
「偽装雇用」をただす取り組みを
この10年、雇用流動化を進める日本経団連路線のもとで、非正規雇用労働者の割合は3割を突破し、さらにその周辺に(特に電機・IT・運送・建設等の業界で)本件のような請負労働という就労形態が広がってきました。現代ほど真面目に働く労働者が痛めつけられている時代はありません。
本件命令は、読売新聞夕刊の一面にとりあげられたほか、各紙で大きく報道され、その社会的意義の大きさに、弁護団として改めて身の引き締まる思いをしました。今後各地でこうした労働者を組織化し、「偽装雇用」をただす取組が広がることを期待しています。
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