八尾市の不当な廃止・「民営化」決定
八尾市は,2007(平成19)年6月,条例で,八尾市立高安保育所の廃止を決めました。「高安保育所を廃止し,八尾市が別の場所に用地を購入し,民間法人に貸与して新たな保育所を建てさせ,その保育所で高安保育所の子どもたちを受け入れる」というもので,いわゆる「保育所の民営化」です。
高安保育所は八尾市を流れる玉串川東側にある唯一の公立保育所で,長年,地域住民に愛され,地域の保育・子育てセンターとして大事な役割を果たしてきました。ベテランと若い保育士さんが力を合わせて,経験と知恵を出し合って,丁寧で質の高い保育がなされ,父母からも厚い信頼が寄せられてきています。
廃止・「民営化」の悪影響は計り知れない
ところが,保育を受けている子どもたち・父母たちの声を聞くことなく,突然の廃止・「民営化」です。
そうなれば,子どもたちは、それまで慣れ親しんできた保育士さんたちとの関係を引き裂かれてしまいます。それだけではありません。「民営化」により、保育内容が,ことごとく,劣化・悪化してしまうことは必定です。例えば,人的問題。私立では,子ども1人あたりの保育士数も少なく、当然、保育内容が手薄となります。今では1週間に数回も行われている園外への「お散歩」(四季折々の自然に触れることを目的に行われてきていました)や夏場の毎日のプールも,人的余裕があってのこと。人手不足は保育内容に直接影響するでしょう。その上,看護師や、子どもの安全対策のための警備員,食事作りのための調理員などのスタッフも削られることも強く危惧されます。
また,保育士さんの経験年数。高安保育所では経験豊かな保育士さんが,長年培った豊かな内容で保育が行われています。しかし私立になれば,経験年数の短い保育士さんばかりでの保育になることが予想されます。現に,八尾市内の私立の保育士さんの経験年数はとても短く,経験5年未満の人が6割を超え,10年未満となると9割を超えるとのこと。これでは,保育経験の蓄積もままならないでしょう。さらに,年度途中に担任の保育士さんがやめたりすることもあります。先に「民営化」された安中東保育所(民営化された「ゆう安中保育所」。ここも住民の反対運動があるのに強行)では,年度途中になんと8人もの保育士さんの途中退職があったとのこと。これでは安定した保育は望むべくもありません。
保育所は,子どもたちが長時間暮らす生活の場であり,保育士さんや友達との交流を通じて成長し,人格を形成していく場でもあります。保育所の廃止・「民営化」は,施設も変わり,保育士も変わることにより,これを途中で切断してしまいます。子どもたちの人間形成への悪影響は取り返しがつきません。
廃止・「民営化」反対の運動と裁判
こうした八尾市の蛮行に,若いお父さん・お母さんが立ち上がりました。父母会は,「市立高安保育所の廃止・民営化条例を提案しないことを求める要望書」を一世帯一署名で取り組みました。入所させている保育児童世帯の90%,直接影響を受ける児童の世帯では100%がこの署名に賛同しました。また,住民からも,8000筆を超える要望署名が市に提出されました。そして,直接影響を受ける子どもたちとお父さんお母さんたちが原告になって,大阪地方裁判所に「市立高安保育所の廃止処分取り消し」の裁判を提起しました。
ちなみに、公立高等学校が廃止される場合には(これ自体も問題ですが),在校生が卒業するまで学校がなくなることはありません。ところが,この保育所の廃止は,ある日、突然、それまで子どもたちの生活の場であった保育所がなくなってしまうのです。
こんなことが許されていいわけがありません。「官から民へ」との流れの中,全国で多くの公立保育所の廃止・「民営化」が父母の切実な声も無視し,子どもの豊かな成長を犠牲にして強行されています。
こうした流れに抵抗して,勇気ある「NO」を表明した若いお父さんお母さんたちとともに,かつてのわが子たちの保育所生活を思い出しながら,頑張りたいと思っています。
(当事務所の弁護団は谷、長野、城塚、山室です)

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