事務所案内 弁護士紹介 法律相談と費用のご案内 取扱事件の説明 情報発信 リンク集
HOME > 情報発信 > 孔市良通信 > オーストリアチロルアルプスとドロミテの山と花の旅X


 

1.ドロミテのドライ・チンネをめざして
オーストリアのチロルの山と花の旅がメインではあったが、ひとつだけ、イタリアのコルティナ・ダンペッツォに泊まって、ドライ・チンネの足元まで行って有名な岩峰を眺めてみたいと思っていた。
 また、この岩峰の登攀を主題にした新田次郎の「三つの嶺」(文春文庫)という山岳小説があり、昔この本を読んで、ドライ・チンネにあこがれていたことも行ってみたい理由のひとつであった。
 そこで、少々イタリア側に寄り道をすることになった。7月20日(火)オーバーグルグルのホテルを8時30分に出発してティンメル峠をめざした。
 オーバーグルグルまで乗ってきた大型バスは、ティンメル峠の道路を通行できず、大型バスは私たちの荷物を載せて、インスブルグに一旦帰り、そこからブレンナー峠を越えてイタリア側に来ることになった。その代わり、小型バスが私たちを乗せて走るために迎えにやってきた。
 ミニバスの運転手は40歳過ぎの女性で、バスに子犬を同伴してやってきたうえ、まったくあいさつもせぬ無愛想な人だった。まぁ、ミニバスを運転するのに愛想はいらないのだと思ったが、なんだかいやな気持ちがした。
 空は曇っており、いまにも雨がきそうな天気で、左右の残雪の曲がりくねった山岳道路を頼りなくバスは進んでいった。
 ティンメルヨッホシュトラーゼ峠(2474メートル)を越えてイタリア側のモソアの村に入ったところで、バスがものすごい煙を出して道路際に停車。煙の他に車前方の車輪付近から火が出て大騒ぎで避難することになった。下手なバスの運転手のブレーキのかけすぎらしい。このため交代のバスが来るまで田舎の道で一時間以上待たされることになった。幸い一時間待ちでバスが来て、新しい運転手の運転でステーツィングという町の駐車場までたどり着き、元の大型バスがそこで待ってくれていたのに乗り換え、オーストリアとイタリア国境の町ドッビアーコを通過して「ドライ・チンネ」の出発点の山小屋アウロンツォ小屋(2320メートル)に到着した。
 なお、毎年夏には私たちが通過してきたオーストリアの国境の町ドビアッコでは、マーラー音楽祭が開催されており、ドビアッコに一泊して音楽祭にと考えていたのだがホテルがとれず、マーラー音楽祭はあきらめることにした。

2.ドライ・チンネを見上げてハイキング
(1) アウロンツォ小屋に到着してあたりを見渡すと、荒々しい岩峰がそびえているばかりで、青々とした草原はどこにも見当たらない。昨日までのフェントや オーバーグルグルの山々とはまったく異なった山塊である。
 この地域全体はドロミテ山塊といわれているが、この名前はこの地域の地質構成を研究した18世紀のフランスの地質学者ドロミューに由来するといわれている。この地域の地質はドロマイトと呼ばれる石灰質の岩石で、このドロマイトの性質と浸食作用によって目の前に見られる垂直の山と赤紫色の岩肌を作り出したのである。
 私たちがアウロンツォ小屋を出発したのは午後3時5分で、まずラヴァレート小屋をめざす。ここまで40分、2344メートルの地点で昨夜からの雨で水たまりができている。
 この小屋の近くには、黄色の美しい花が多い。まず第一はケシの花の黄色、日本のリシリヒナゲシの仲間で、これは日当たりの岩礫地にかたまって風に揺られながら咲いている(パパベル・ラエティクム)。二つ目は、花びらはあまり開かないこんもりした黄色またはクリーム色の花、日本のキンバイソウの仲間トロリウス・エウロパエウス。その次は日本でも高層湿原に多いリウキンカで、雪解けとともに咲く花で葉も花も色が濃い。ざっと見た目には岩だらけの山道であるが、リンドウもワスレナグサもピンクのサクラソウも咲いている。
 ラヴァレート小屋から登った鞍部(2454メートル)からはドライ・チンネの三つの峰が見える。しかしまだまだ不完全で、全容はロカテッリ小屋へ行く道からが一番眺めはよい。
 さきほどの鞍部の近くでめずらしいツツジの花に出会った。ロドタムヌス・カマエキスツスの学名のある一属一種のツツジ科植物。東部アルプス2400メートルの石灰岩質の日当たりのよい岩場に咲く保護植物で、雄しべが花の外に突出し、花色は桃色または紅色で、紅梅のような花である。こんなめずらしい花を写せて大満足であった。
(2) 三つの峰はドイツ語ではドライ・チンネであるが、地元ではトレ・テーメ・ ディ・ラヴァレートという。トレ・テーメは三つの頂の意味で、左からピッコラ(小)、グランデ(大)、オッチデンターレ(西)とわかりよい名前が付けられている。一番高いグランデで2999メートル、ピッコラは2857メートル、オッチは2973メートルと3000メートルに近い三つの峰が並んでいるのだから雄大な眺めである。
 ロカテッリ小屋までは少々時間がかかり、雪もきそうなので、途中まで行って振り返ると三つの峰の北面が全体を現してくる。500メートルも垂直に直立した姿は恐ろしいくらいの圧迫感がある。足元の雪渓の白さも一層美しく思える。
 雪渓の残っている付近にも花は多い。すでに述べたようにドロミテ山群の石灰岩はドロマイトと呼ばれるが、日本では白雲石と呼ぶ。その白い岩礫地に咲くピンクの花、ナズナの一種(トラスピ・ロシンディフォリウム)は印象的である。
 白い花では、やはり岩の割れ目に咲くサクラソウ科トチナイソウ属のアンドロサケ・ヘルベティカも美しい。オーバーグルグルのホーエムートで見たイワカガミダマシ属のソルダネラ・プシラのピンクの花、同時に白花もかれんに咲いていて、そこだけまだ春の雰囲気である。
 5時50分、出発点のアウロンツォ小屋に帰り、コーヒーを飲んで一服して、今夜の宿泊地コルティナ・ダンペッツォに向かって出発した。この山は岩だらけで、途中、雷やにわか雨にもおそわれたが、それも一時的で、チロルとはまったく違った山を経験することができた。同時にめずらしい高山植物も多く、これは思わぬ収穫であった。


 〒542-0012 大阪市中央区谷町九丁目3番7号 中央谷町ビル2階 (06)4302-5153(代)