(1)ストロンボリ島のセッラ・ヴァンコーリ(926m)と呼ばれる山頂は古代噴火の残骸であり、ここから200m以上下に現在の火口があり、東をフィーロデル・フォーユ、西をフィーロディ・バローナと呼んでいる。
この島は、深度が1,100〜1,200メートル海底からそびえているので、火山の実際の高さは2,026〜2,126メートルになるそうで、現在も常に活動中の火山であり、激しい噴火が閃光で夜空を照らし、灼熱の火山砕屑物が線を描き、マグマは熔岩流の通り道、シアラ・デル・フオコをつたって谷に流れ出して海まで達するのである。この様子は船に乗ってラブロンツォ岬からも観察できるので、船による噴火見学もある。
一方、火山(924メートル)の高度700メートル地点にある噴火口と噴火の様子を見に行くには、ガイド付きの夜間登山となる。
まず港の近くの登山ガイド事務所に夕方4時30分に集合し、誓約書に署名を求められる。一言でいうと、すべてガイドのいうことを聞く、命令通りに動くということである。その後懐中電燈を持っているか点検され、持っていないとそこから15分くらい登った教会のとなりの登山用具店で買わされる。何故なら、出発の時点では、まだ太陽も高く、8時近くまで薄明るいが、9時をすぎると暗くなり、山道の下りはランプなしには動けないからである。
まず、私達16名とドイツ人の男性、アメリカ人の男性、フランス人の老女などとガイド3人、計20数名で午後5時出発する。最初はペースが早く、休憩なしで40分間整備された山道を登る。約3分の1弱の地点で休止する。そして、これから2時間全く休みなしで登れる人は、このまま直登組に参加してください。早く、休憩なしに歩く自信のない人は別コースでガイド一人が付くので、脱落コース組に入ってくださいと粗分けをされた。
(2)私と谷弁護士や、佐賀の70才以上の婦人とフランス人の老女ら5名は脱落組に参加した。私はこれで火山の噴火は見られず、むなしく村のホテルに帰らねばならないとあきらめた。ほとんどの人は、直登組に参加して、元気に前後をガイドに守られて登っていった。
僕たちはゆっくり山をまくように平坦な道を歩き始めた。この山は頂上附近は別にして、300メートル位の高さでは花が多い。まず、この島特有のエニシダの珍種チディゾ・エオリコの濃い黄色の花が美しい。山麓のほうを見ると、ブドウ畑が沢山あり、オリーブの古木も多い。サボテンも実をつけている。ガイドに聞くと、ピンクのバラのような花はフィーコ(Fieco)と呼ぶらしいが、これが山道を赤く染める位咲いており、これらにまざってやはりバラと思われる白い花も咲いている。まめ科のメディガゴ・サティパも紫色にところどころ咲いており、背の高いエニシダの黄色とピンクと白と紫の色合いで山々を飾っているのは大変美しい。そして、いつも海上に見えている海岸から1.5キロ先の49メートルの高さの玄武岩の小島ストロンボリッキオと灯台と海と空の青さ、村の白い家々、これをすべてを一望のもとに目に入れて歩くのは本当に楽しい山歩きであった。脱落組に参加してよかったと谷君と話し合いながらのんびりと歩いた。そのうちに村へ帰る道と火山見物への登り道との分かれ道にぶつかった。どうするとガイドが聞くので、勿論火山見物と答えて、登りだした。
海からの激しい風が、火山灰を吹き上げている長い谷間が見える400メートルの地点に到着したのが午後7時45分、海を眺めると、観光船からパチパチとフラッシュが光るのが見える。少々暗くなりかけた午後8時、大きな爆発音と共に噴火で赤く空を染めるのが見えた。パラパラと小さな粉の赤いのが谷間をころげ落ちて行く。月は満月に近く山全体をあわく照らしている。5,6回爆発を見てその様子をカメラにおさめて、8時40分下山しようかということになった。何故なら風が吹き上げてくる上に寒くて仕方がない。火山の爆発の見物をやめて、下山することにした。月が明るく、ヘッドランプがいらない位である。下りながらも大きな音がすると振り返って見上げる。すると、真っ赤な太い花火が暗闇の空に広がるのが何回も見ることができた。
(3)ホテルのある村とは別の村に下って、約1時間村の中を歩き、元のガイド事務所に帰って来たのが午後11時をすぎていた。
ガイド事務所の隣のバーで、ソフトクリームを買って、十分満足してホテルに帰ってきた。ホテルに帰ると、既に健脚組の10数名はホテルのレストランでヤケ酒を飲んでいた。話を聞くとガンガン登ってはみたが、煙と灰で口の中がじゃりじゃりして、食事もできず、下からの吹き上げてくる風で火山灰や煙がおしよせ、噴火の花火どころか線香花火のようなものをちらっと見ただけで、砂走りを走りおりてきただけであった、ということだった。ドイツ人の男性は半パンツで参加したため、寒さで足がしびれて歩けなくなったり、いろいろ大変だったらしく、誰一人噴火の写真も撮影していないと嘆いていた。
脱落組が天国で健脚組が地獄ということで、私達は何回も大笑いした。脱落組にとって最高の山歩きであった。
ストロンボリ島は夢のような世界であり、3時間も船にゆられてやってきただけの値打ちは十分にあったというのがすべての参加者の気持ちというか、感想であった。 |